読書の秋
スポーツの秋
食欲の秋
芸術の秋
実りの秋
行楽の秋
睡眠の秋…………
秋はやることが多いですね。
そもそもなぜ「〇〇の秋」という言葉が多いのか調べてみると、
『秋は過ごしやすいから』
だそう。
春だってそうじゃないかと思いましたが、春は年度の変わり目でなにかと忙しく、
比較的落ち着いた秋は、何かするのにうってつけの季節だからいろいろな言葉が生まれているそうな。
そこで、健康診断で自らの体重に絶望こそしましたが、
今年はスポーツの秋ではなく読書の秋と銘打って、積読本を読み漁ろうと思います。
そんな私がこれまで読んできて心に残った小説を、印象的だった一説とともにご紹介いたします。
(改行は幅の都合により、本文と異なります)
スカイ・クロラ/森博嗣
“ 僕を支配しているのは右手だった。
僕は、彼女に冷たい言葉を投げた。
それはきっと防御本能だっただろう。
僕は、
いつだって、
そうして、
生きてきたのだ。
そうしなければ、
生きてこられなかったのだ。”
小説の表紙にある一説と関連付けて、主人公のこれまでの生き方、そして自分の存在の受け入れ方が表れていると感じます。特異な世界に生きる主人公に現実の私が感情移入できた理由は、この一説にあったんだと考えさせられます。
横道世之介/吉田修一
“「いろんなことに、『YES』って言っているような人だった」
「もちろん、そのせいでいっぱい失敗するんだけど、
それでも『NO』じゃなくて、
『YES』って言ってるような人」”
世之介のような人こそ、長い人生でずっといろんな人の記憶に残り続けるのだと感じられます。なにか大きなことをしなくても、この心の豊かさ、人間らしさが周りに与える影響は計り知れないんだろうと羨ましくも思えます。
ツバキ文具店/小川糸
“ だって、言葉は残るのだ。
相手がその手紙を読んでしまったら、もう後戻りはできなくなる。”
口を出る言葉、自分から離れた言葉が遠く独り歩きしてしまうこの時代に、言葉の責任と美しさの両方に触れることができる作品でした。
有名な作品から選ばせていただきましたが、ビビッときた方はぜひ一読を。
秋の夜長のお供になれば幸いです。